金融庁が発表した「老後は年金では不十分で、自分で2000万円貯める必要がある」と述べられているレポートがあります。
世間では驚きをもって受け止められ批判が集中し、麻生大臣も受け取りを拒否する異例の事態となっていましたが、9月25日に、この報告書の撤回が決まりましたね。
しかし「良かった!これで貯めなくていいんだね」と安心する人はいないでしょう。
この機会にレポートの内容をもう一度見直してみましたので、内容を解説します。試算の前提で大きな盲点があるなと感じましたので、その点を解説します。もしかしたら2,000万円では全然足らないご夫婦もいるかもしれません。
ぶるぶると言います。
金融業界で長く働いておりまして、お金や節約、資産形成についてのお役立ち情報を発信中です。
今回のテーマは金融業界では有名な「老後2,000万円問題」。
2,000万円とはなんなのか。なぜ年金だけではだめなのかを解説します。
また、この試算には致命的に抜けている要素があるので、その点についても解説していきます。
どうぞご覧ください。
1.金融庁のレポートで言われていること
少し前に世間を騒がせた金融庁の「老後資金は2,000万円足らない」問題について、今一度内容や金額を見てみましょう。
金融庁のレポート言われている内容をすごく簡単に絡めると
ポイント
夫65歳、妻60歳の平均的な方の老後の収支は
- もらえる年金は月21万円
- 平均的な支出は月26万円
→月5万足らない
です。

年金は65歳から支給されますが、その支給額は一般的な夫婦二人で、おおよそ合計21万円ほど。
支出については、平均的には食費や楽、衣服、光熱費、通信費、医療費などで、夫婦二人で26万円ほど必要です。
この21万円と26万円は、厚生労働省の試算です。試算によると、月5万円の赤字ですね。
最近は人生100年時代と言われますし、長生きリスクなんていうフレーズも出てきました。仮に95歳まで夫婦二人とも生きた場合、30年間はこの生活です。
月5万の不足を30年分用意するとなると、1800万円必要です。
この厚生労働省の計算の元、金融庁は「だいたい2000万円が老後に足らないので、自分で貯めてくれ」とレポートを出したのです。
金融庁の本当の目的は「老後資金のために投資や運用が大切です」と言いたかったでしょうけど、そこではなくて、
「年金だけで生きていけると思っていたのに、なんだそれは!」
と非難が殺到したのでした。
2.サラリーマンは何とかなる
あれだけ非難が殺到したのは、正直僕も驚きました。
「年金だけで暮らしていける」なんて、そもそも誰も信じていないと思っていましたし、かなりいまさらな感じがしていたからです。
しかし世間は怒りました。
「急に2000万円貯めろって言われても、そりゃ無理だ」
確かに、2000万円なんて急に貯めろと言われても難しい金額です。2000万円貯めるためには、月5万円の貯金を30年間続けなければなりません。
いきなり月5万円の貯金を始めようと思ってすぐに始められる人は多くはないでしょう。
しかし、実は多くのサラリーマンは青ざめるほどの事実ではありません。一般的なサラリーマンは、実は意外に何とかなるのです。
仮に貯金ゼロで65歳に突入した場合は、月5万円足らないという話になります。
しかし、例えば一般的なサラリーマンの退職金は1500~2000万円ほどもらえるというデータがあります。
また親の遺産を相続して受けることもあるでしょう。
よって、月5万円くらいの不足であれば、何とかなるご家庭が多いと考えられます。
「老後は2000万円足らない」というフレーズが独り歩きしていますが、どんな前提で、何が計算に入っていて、何が考慮されていないのかを把握しておくことが大事です。
3.住居費の問題
「老後資金については、多くのサラリーマンは何とかなるでしょう」と申し上げました。
が、何とかならないケースもあります。
実は厚生労働省の生活費26万円の試算に、一つ盲点があります。
住居費です。
試算上ではほとんど住居費がかかっていない計算になっていることをお気づきでしょうか。
図の中で住居費があるかと思いますが、これが1.4万円ほどとの試算。
この試算で大丈夫な方、違和感がない方は、マイホームを持っていて、かつ住宅ローンをすでに払い終わっているような方ではないでしょうか。
マイホームを買い、住宅ローン35年を65歳までに払い終わっている人
こういうご家庭のみが、住居費がほぼゼロで生活できる家庭です。その場合、30歳までに家を買い、ローンを組んでいる必要があります。
確かに、30年前は結婚も早かったですし、30歳前後でローンを組んでいる人が多いかもしれません。なので、そういった事情が今の高齢者の平均値として現れているのでしょうか。
が、今はどうでしょうか。
晩婚化も進んでいますし、30歳までに結婚しマイホームの購入まで終わってしまっている人はどのくらいいるでしょうか。
そもそもマイホームを買わない人も増えていませんか。
核家族化も進んでいますから、昔みたいに「郊外に広い一軒家」というスタイルも薄れてきています。
マイホームを持たずに賃貸生活を続けていくスタイルのご夫婦、ご家庭も多いでしょう。
そうなると、65歳の時点でローン返済が残っていたり、家賃を支払わなければならないご夫婦は相応にいらっしゃるのではないかと思うのです。
関東圏に賃貸でお住まいであれば、二人で住むとしてもの毎月10~15万円ほどの家賃がかかるでしょう。同じく関東圏内でマンションや一軒家の購入をされているご家庭の場合、月に8~15万くらいのローンが残っているケースがあります。
住居費は、月々の固定費として、一般的にはもっとも大きいと考えられますので、これらの住居費が加算されるだけで、大幅に計算が狂います。
4.試算や将来の必要額は人それぞれ
これまでご説明したように、住居費など大きな金額次第で、老後資金は変わってきます。
時代やライフスタイルは人それぞれですし、かつスタイルの移り変わりだってあります。
要するに、結局は自分で計算するしかないんですよね。
ただし、退職金がいくら出るとか、親からの遺産がいくらかなんて、分かりにくいことも多いです。
それに、最も分からないのは、自分が何歳まで生きるか。
75歳までの人生なら2000万円も必要ないけど、105歳まで生きるなら足らない、という話です。
ですので、何百万円めたらいいのか、という実額を計算することはかなり難しいということです。
では、どうするかというと「いくら貯金しておくか」という発想ではなく、月々いくらかの収入が入ってくる経路を作っておくことでしょう。
月5万円が入ってくる収入があれば、「いくら貯めておけばいいか」という発想から解放されます。
お金の入口を複数持っておくことが安心料として有効です。
副業と言うと怪しいですが、これからは齢に縛られない収入口を複数持っておくという発想についても当然検討しておくべき。
当サイトでは別記事で様々な手段などについて情報を発信しています。
もしご興味があれば、参考にして頂ければ幸いです。
終わり