夢のマイホームを新築。
結婚を機にマンションを購入。
家の購入は一生に一度の大きな買い物だと言われますが、まさにその通りで、やはり金額があまりに大きいです。
多くの方が住宅ローンの利用を検討されるでしょう。
とはいえ、世の中に住宅ローンは無数にありますし、どういった基準で選べばいいか難しいですよね。

住宅ローンを検討する際に考えるべきポイントは3つ。
住宅ローンを選ぶポイント
- 誰がローンを組むのか(借入名義は誰か)
- 金利をどうするか(変動や固定)
- 諸費用はどのくらいかかるか
この3つを抑えれば、どの銀行を使って住宅ローンを契約すればいいかが見えてきます。
本記事では、「金利をどうするか(変動や固定)」について焦点を当てて解説します。
参考
誰がローンを組むのか。
夫だけが唯一の選択肢ではありません。夫婦で共同で組むことも可能で、税制や団信などメリットがありまして、以下記事で解説しております。
住宅ローンの金利以外に諸費用についてはこちらで解説しています。
目次(好きな章に飛べます)
1.住宅ローンの金利について
住宅ローンの金利は時々によって変動しますが、近年は非常に低水準状態が続いています。
例えば住信SBIネット銀行の変動金利は、0.447%とかなりの低さ(2019年8月時点)。
非常に細かな数字ではありますが、住宅ローン自体の金額が大きいため0.1%違うと、生活に大きな影響ありです。
例えば5,000万円の住宅ローンを組む場合、月々の返済額とトータルの返済額は、35年元利均等の場合、以下のようになります。
金利 | 月々の支払い | 完済までに支払う総額 |
0.5% | 129,792円 | 54,512,740円 |
0.55% | 130,900円 | 54,978,024円 |
0.7% | 134,260円 | 56,389,153円 |
1% | 141,142円 | 59,279,814円 |
1.25% | 147,043円 | 61,757,889円 |
1.5% | 153,092円 | 64,298,491円 |
ご覧のように、0.1%違うだけで月々の返済が2,400円ほど増えるのが分かります。
よって、小さな差でも注意深く金利を見つつ、住宅ローンを選んでいくことがキャッシュフロー上、とても重要です。
2.住宅ローン金利の3つのタイプ
住宅ローンを選ぶ基準は、なんといってもまずは金利。
低いほうがいいに決まっていますが、話はそう単純でもありません。
金利のタイプは3つ。
ポイント
- 変動金利
- 固定金利
- ミックスタイプ
この3つのタイプをそれぞれ詳しく解説していきます。基本を抑えることで、どう選べばいいのかが見えてくるでしょう。
2.1 変動金利
「変動」という名の通り、住宅ローンを借りている間に適用金利が変動します。
ローンの返済とは二つに分けられます。
借入額そのもの(元本と言います)の分割返済と、残っている元本に応じた金利支払いです。
金利が変動すると、後者の「金利支払い」部分の金額が増えたり減ったりします。
月々の返済額が膨らむ可能性もありますが、減る可能性もあります。
ご参考
住宅ローンの変動金利は、マーケットや景気を踏まえて日銀がコントロールしている短期プライムレート(通称短プラ)に連動して変化します。
この短プラは半年ごとに見直しが行われます。
じゃあ、金利が見直される半年ごとに返済額もコロコロと変わるのかというと、そうではありません。
元利均等の場合、返済額は5年ごとに見直されるのが通例。
仮に年に2回金利が見直されても、返済額は変わりません。返済額の元金と利息の割合を調整するからです。
金利が上がると、
元金の返済8 金利2
↓
元金の返済7 金利3
となります。
ただこれだと金利が上がると、金利分ばかり払って元金が一向に減らないですよね。
5年ごとに返済額が見直されますが、この時に元金が減っていない分が調整され再計算されます。
減らなかった元金が後ろに回ってきて
元金の返済9 金利3
になるようなイメージです。
2.2 固定金利
その名の通り、借りている間の金利が固定されます。マーケットや経済情勢がどうなろうと、支払い金利は一定です。
よって、「支払金利は合計でいくらか」ということが最初に確定します。マーケットの金利が上がっても下がってもご自身の支払いに何の影響もありません。
ただ、ブレがないという代わりに、固定金利は変動金利よりも高いです。

フラット35について
例えば35年ローンの全期間の固定であれば、フラット35の利用は検討すべきです。
フラット35とは、住宅金融支援機構という政府の機関が管理している住宅ローンです。(住宅金融支援機構は、国土交通省と財務省が所管する独立行政法人)
住宅金融支援機構と民間銀行が提携しており
住宅金融支援機構が管理しているフラット35という商品を、銀行が窓口になり融資している
という役割分担。
だからフラット35は
- 住信SBIネット銀行のフラット35
- 楽天銀行のフラット35
- ARUHIのフラット35
と色んな銀行にあるのです。
普通の銀行の住宅ローンと比べて、フラット35にも欠点があります。
フラット35のデメリット
・増改築、住宅購入に伴う諸費用などは借りれない
・8000万円以下しかダメ
欠点があるとはいえ、かなりの低金利で金利を固定できる点が魅力。
また、利用条件が緩く、審査に通りやすいという長所もあります。一般には金融機関はそれぞれ借入人が勤続年数が何年かであったり、最低年収はいくら以上という基準を決めています。
一方でフラット35では勤続年数や最低年収ついて要件を定めていません。
特徴は、頭金を入れるかどうかで金利が変わること。
10%くらいの頭金が目安。(※10%の頭金を入れるということは、3,000万円の住宅を購入する際に300万円は現金で払い2,700万円をローンで借りるということ)。
例えば楽天銀行なら以下のような感じ

上記に加え、フラット35sというのもありまして、省エネルギー性、耐震性など質の高い住宅を取得する場合に利用可能です。
金利が一定期間引き下がります。当初金利引下げ期間が10年なら金利Aプラン、5年なら金利Bプラン。

フラット35の内容は楽天銀行のページは分かりやすいですね。
なお、頭金を入れるかどうかは賛否あると考えています。頭金が気になる方は以下をご覧ください。
2.3 ミックスタイプ
変動金利と固定金利のミックスです。
最初の数年は固定金利で、後半が変動金利といったタイプの住宅ローンです。
例えば「当初3年は固定金利0.5%で、その後変動金利」といった商品。
ちなみに、
変動⇒固定
のタイプはありません。
具体的に見てみますと、例えば三菱UFJ銀行の当初3年固定。

この図に書いてあることを説明します。
最初の3年間は0.49%で固定。
4年目からは、その時の店頭表示金利というものから1.8%引いたも数字になります、ということ。
今の店頭金利は2.94%なので、4年後も仮に店頭表示金利が変わらなければ、4年後は1.14%の支払いということになります。
この店頭表示金利がまさに変動します。5年後に店頭表示金利が例えば4%に上がれば、支払う金利は2.2%という計算。
なお、属性がいい方は、マイナス分が1.8%ではなく最大1.85%引きますよ、というオマケつき。
3.自分にあった金利を選ぶには

金利タイプには3つあることをご紹介しました。
では、自分にとってベストな金利タイプを選ぶには、何に気を付けたらいいでしょうか。何を考えれば、最適なタイプを選べるでしょうか。
ここでは、金利タイプを選んでいく際に気を付けたい着眼点をご紹介します。
見通しを考える
今の金利水準は過去から見てどうなのか、今後の金利は上がりそうか、下がりそうか。
上がるとしてもいつから上がるだろうか。
こういう金利の先行きの読みによって、変動か固定かを選択することになります。
変動金利は短期プライムレートというものに連動するとご紹介しましたが、これは日銀がコントロールしています。
どういう時に上げ下げのコントロールをするのかと言えば、
金利の動き
・経済が順調で熱くなりすぎたら、金利を上げて冷やそうと試みる
・経済が不調でもっと熱くしたいときに、金利を下げて熱くしようと試みる
ざっくりとした表現をすればこのような感じ。
まさに今は日本の経済が良くならないので、金利をものすごく下げて(マイナス金利など)、経済をなんとか加熱させようとしている段階です。
では、今後「だいぶ熱くなってきたし、そろそろ冷やしとくか」という局面がどのくらいあり得そうかということがポイントです。
要するに、日本経済の見通しですね。
金利を上げて経済を冷やすことのインパクトは大きく、非常に慎重に検討が重ねられます。
似たような経済冷やし効果に「消費増税」がありますが、それでもこれだけ延期したり反対があったりするほど。
ちょっと経済が回復してきても、それだけで簡単に利上げしてしまうと経済回復の腰折れになりますので、そうなれば日銀へ相当な批判が来るのです。
日本はこれからも増税や人口減少、少子化など経済にマイナスな課題が山積しており、そう簡単に経済が加熱していく状況が想定できない現状です。
じゃあ景気を冷やす効果のある金利引き上げを日銀が行うシナリオが、どれほど起こりえるかをよく考えるべきでしょう。
とはいえ、それも踏まえてもやはり10年後20年後を見通すことは非常に困難です。
世界の誰もできません。
ですので、その意味でリスクが全くない固定金利を選択するのは全く間違っていません。
変動と固定の差
固定金利を選べば、変動より高くなってしまうことはご説明しました。
しかし、着目したいのは、その差です。
実は、歴史的な低金利政策のおかげで、変動と固定の金利の差がかなり縮まっています。
確かに固定を選べば高くなりますが、それでもかなり安いです。
長い歴史を見ても、ここまで大差ないのは初めてだと言っていいと思います。このメリットを享受できるうちに固定金利で組むのは、いい選択です。
とはいえ、当面はほぼ上がらないでしょうから、変動金利にしておき、この超低金利の恩恵を受けられるときに受けるという判断もありです。
変動を選ぶ場合でも余裕をもって
変動金利は固定金利よりもグッと安いです。
変動を選ぶということは、今の低い金利の恩恵を受けつつ、将来どうなるか分からないという不確定要素を受け入れること。
金利は上がることもあれば下がることもありますが、もし万が一日本の景気が順調で金利が上昇したとしても耐えられるようにしておくべきです。
変動金利が、その時の2倍になったら支払額はどうなるか、2倍になっても耐えられるかを最低限のリスク管理としてみておくべき。
ちょっと金利が上がったら資金ショートしてしまうのであれば、借入金額を下げる選択肢を検討しましょう。
細かい話をすれば、現在はかなり金利を意図的に下げている状態ですから、これはこれで批判もあるわけです。
よってどちらかと言えば、金利は今より下がる可能性は低く、横ばいかやや上昇、という見通しがやや多め。そういうこともあり、金利上昇に備えた資金繰りを考えておくことが望ましいです。
できれば、変動を選んでも固定金利を選んだ場合と同じ支払額を用意し貯金しておくことです。
ミックスタイプは本当にお得?
ミックスタイプは、「当初〇年固定、そのあとは変動金利へ移行」といった商品でしたね。
まさにハイブリット式で、何となくいいとこ取りをしたような雰囲気が漂ってきます。
金融の世界では、目の前よりも将来のほうが不確定要素が強いのが常識です。日常的にも、明日の事よりも5年後のほうが分かりませんよね。
金利も同じで、1年後2年後くらいであれば、変化したとしてもそこまで大きくブレないでしょう。有名なアナリストの多くも、1~2年は金利は横ばいだろうと予想しています。
でも10年後20年後の金利などかなり先のことを見通すのは、優秀な金融アナリストでも不可能。
-目先は分かるけど、将来は分かんない-
こういう前提がある上で是非考えて頂きたいのは、「当初固定にして後半が変動」の意味があるかどうかです。
ブレが少ないであろう目先を固定し、本当にこわい10年後20年後は変動金利ですよ。これに、経済的メリットがどこにあるでしょうか。
当初固定は、一見「お、安いな!」という見え方をして、かつ「固定」というフレーズが安心感を与えます。
しかし、後半の変動金利は少し高いです。初めから変動金利を選んでいた場合の金利よりも高くなっていることが多いです。
正直この当初固定タイプは、安易なイメージに飛びつきがちで、将来よりも目先のことを考えてしまうような消費者をターゲットにしただけのものであり、個人的にはあまりメリットがない商品だなと思います。
「3つ出されたら、真ん中を選ぶ」みたいな単純思考はやめておきましょう。
もちろん、向いている人もゼロではなくて、例えばマンションなどを途中で売却してしまう前提でローンを組んでいる人にとっては、いい商品かもしれません。
4.変動と固定は結局どっちも同じ
実は、変動と固定は、結局どちらを選んでも損得は変わらないという意見もあります。
難しい話をしますが、仮に変動金利が0.5%、固定金利が1.2%だとします。
固定金利が1.2%であるということは、すなわち0.7%のコストを払えば変動と固定はトントンだな、とマーケットが思っているということです。
もっとブレる可能性があるなら、例えばマーケット参加者が「将来近いうちに3%4%と金利が上がっていくのでは?」と考えていたらどうでしょう?固定金利は1.2%どころではなく、もっと上がるはずです。
逆に、10年後も金利が横ばいであろうという意見がマーケットに多ければ、固定金利はもっと下がります。
要するに、変動と固定の差は、どちらを選んでも損得が同じであろうとマーケットが思うラインに自然になっているのです。
どちらが得かなあと考えるだけ、もしかしたらムダと言えるかもしれませんね。
(まあ、理論上はそうなりますが、必ずしもマーケットが将来予測を完全にできないので、この通りにいかないのですが。)
5.どうしても決められない人は
「リスクが怖行けど、でも損もしたくないんです」
このように、変動か固定か決められない方は、裏ワザがあります。
借入を2つに分けて、片方が変動金利、片方が固定金利に設定しましょう。
裏ワザというほども物でもないですが、例えば夫婦でペアローンを組むような場合には、どちらにしろ借入が2つに分割されますので、こういう金利の選び方をすれば、いいとこ取りが可能です。
ペアローンなど、夫婦でのローンの借り方は様々あり、メリットデメリットがありますので、注意です。
夫婦で組む場合は、以下の記事をご覧ください。
>>夫婦で組むならペアローンと連帯債務、連帯保証はどれがお得?
終わり