住宅ローンを組む際に考えるべきこととして、頭金を入れるかどうか、という問題があります。

そんな疑問にお答えするため、今回はそもそも頭金を払うことがお得なのかどうなのかについて解説します。
ぶるぶると言います。金融業界で仕事を長くしながら、お金や金融、節約について研究しており、お役立ち情報を発信しています。
今回のテーマは住宅ローンの頭金。
「頭金を入れる」とは、購入する不動産の代金の一部を現金で払うこと。その残りを住宅ローンで組むことになります。
ローンを組む額が少なくなりますから金利支払いも節約出来ますし、頭金を入れることを銀行側も推奨していますね。
では、本当に頭金を入れることはお得なのでしょうか。
目次(好きな章に飛べます)
1.住宅ローンの頭金
3,000万円で家を新築。
夢のマイホームですね。
結婚して子供もできて、だんだんと家族の形が出来てくる。そんなタイミングでマイホームの購入に踏み切る方が多いでしょう。
夢のマイホームですが、とは言え夢ばかりではなく、その裏側には大きな覚悟も必要です。
そう、ローンですね。
住宅ローンについて調べていると、必ず一つの選択を迫られます。
-頭金を入れますか?-
調べていくとすぐに分かりますが、頭金を入れると金利が安くなったりする銀行があります。固定金利でよく選ばれるフラット35についても、頭金を10%入れると金利が変わったりします。
頭金を入れることのメリットは2つ。
頭金のメリット
- 借入金利が安くなる場合がある
- 借りる額が少なくなるので、毎月の支払い金利が減る
「頭金を入れてくれたら金利を下げるよ」ということは、銀行側としても頭金を入れて借入額を減らすことを推奨していることになります。
2.頭金を入れるデメリット
頭金を入れるデメリットは、たった一つ。
頭金のデメリット
- 手元の現金が減る
当然と言えば当然でして、それ以上でもそれ以下でもないのですが、ここに関して甘い認識をもっている方が多いことに懸念を抱いています。
3.現金が最強

現金は相応に持っておくほうがいいというお話をします。
金融の世界では、資産や財産、アセットというと色々あります。現金、預金、株、債券、不動産、貸付金、などなど。
これら資産の色分けとして、換金性が高いか低いか、という見方があるんです。
例えば不動産は資産ではあっても、すぐに現金化することは難しいので、固定的な財産です。
株や債券なんかは、ある程度すぐに現金化できますので、こういうのを「流動的な資産」と表現します。一番流動的なのは、現金、預金です。
会社や金融機関の安全性・健全性を測る上では、この「流動的な資産」がどのくらいあるかに着目することがスタンダードになっているんですね。いくら財産をたくさん持っていても、現金がなくなれば倒産ですからね。
この観点は個人にも当然当てはまります。
要するに、現金を持っていること、極力流動性の高い資産をもっていることが何より安全です。
いくら株をもっていても、いくら広大な土地をもっていても、現金が足りなくなってクレジットカードの引き落としが出来なかったり、住宅ローンの支払いが滞ったりすれば、すぐに信用情報に深いキズです。
また、急な出費は意外に多いです。病気やケガにだって、ある程度まとまった現金が急に必要です。
どのくらい"いつでも使える現金"があるか、ということを「手元流動性」と言ったりします。
自分の信用情報を守る上でも、急な出費に耐えるためにも、この手元流動性には、非常に注意を払う必要があります。
よって、現金はある程度は余分に持っておくべきです。
余裕があって頭金を入れるなら構いませんが、「金利を節約するのだ!」というだけで渾身の現金を頭金に投入するのは、リスク管理として逆にダメです。
ちょっと逸れますが、よくある例は相続。
親が亡くなり、土地などの相続を受けます。不動産という資産は自分のところに転がり込んでくるわけですが、その際に発生する相続税は現金での支払い。
資産はあっても支払うだけの現金がなくて困るというケースがかなり問題になっています。
結局、いざという時は現金が最強であるということを示す一例とも言えますね。
4.住宅ローンは最も低金利
現金をもっておくことの重要性をご説明しました。
ところで、現金は借りることで増やすことが可能です。例えばキャッシングやカードローン。
しかし、こういったものは、非常に金利が高いのです。使ったことがなくても、高金利で危険なイメージはおありでしょう。
少し使うくらいなら信用情報に対する影響は軽微ですが、そもそも金利が高いので、手を出すと雪だるま的に借金が増幅します。
そんな中で、住宅ローンはどうでしょう。
実は個人ができる借金の中で、こんなに低金利で、クリーンに調達できる方法は他に一切ありません。
住宅ローンはとても貴重なんです。
しかも、それを使えるのは、一生におそらく一度だけ。
こういう見方をすれば、このまたとない機会に、金融機関からお金を引っ張れるだけ引っ張るのが得策だと思いませんか。
5.銀行が頭金を入れることを推奨しているわけ
「頭金を入れると金利が安くなりますよ」
こういう設定にしている銀行がそれなりに存在します。要するに銀行側も頭金を入れて欲しいわけですね。

と思われるかもしれません。
でも、そうでもないんです。
住宅ローンを実行すると、通常銀行はその不動産を担保に取ります。いざとなれば不動産をおさえて売っぱらえば、銀行は損しません。
でも、だいたいのケース、頭金なしでフルフルに貸した場合、貸した金額に対して、担保としての値段(売れるであろう金額)が低いんです。
よって、担保としての値段(売れるであろう金額)までローン金額をおさえたいという希望があります。
だから銀行側は頭金を入れて欲しいのです。
6.頭金を入れてもそんなに変わらない

3,000万円のマイホームで、3,000万円フルフルで借りても、頭金300万円投入し2,700万円で借りても、あまり支払い金利は変わらないでしょう。
もちろん35年で計算すれば、全然違うと思います。
でも、住宅ローンを組むであろう20代とか30代は、貯金や蓄えは多くなく、にもかかわらず生活資金は必要です。
毎月の支払金利を数百円抑えるくらいなら、その300万円を手元に置いておくほうがよほどリスクヘッジになるのではないかと思うのです。
7.金利がもったいないなら運用すればいい
もしどうしても
「やっぱり金利を払うのがもったいないので頭金を入れたいです!」
と節約の虫が騒ぐのであれば、それなら運用をするほうがはるかにメリットがありますよ。
頭金300万円を入れて、住宅ローンの0.5%の金利を節約するくらいなら、その300万円を使って投資信託でも買いましょう。
安全な投資信託であれば年利2~3%で運用可能ですし、どちらがお得か明らかです。
しかもこれなら、その気になれば売却してすぐに現金化できますから、メリットしかありません。
もし頭金に入れてしまうと、頭金はマイホームへと姿を変えたということですが、マイホームは「超固定資産」ですし、もう二度と戻ってこないお金です。
「お金をどんな形に変えるのか」ということを広い視野で考えることをおすすめします。
8.まとめ
いかがでしたか。
今回は、住宅ローンの頭金を入れるか入れないかについて、「手元に現金があったほうがいい」ということを解説しました。
「借金はこわいから、少しでも金額をおさえるほうが安心だよね!」という考えは、全否定はしませんが、もっと考慮すべき事項はたくさんあることを知って頂ければと思います。
おわり